2028年度、令和10年度から大阪府の公立高校入試が大きく変わります。
対象になるのは、2026年度現在の中学2年生からです。
大阪府教育委員会からは、
・大阪府の公立高校入試が変わります 令和10年度入試から
・令和10年度 公立高等学校入学者選抜 学校特色枠 令和8年7月31日版
などの資料が公開されています。
特に後者は29ページあり、学校特色枠の仕組みだけでなく、学力検査や調査書をどう扱うのか、具体的な選抜例、さらに各高校が実際に設定する特色枠まで掲載されています。
制度を一つずつ読むとかなり複雑です。
しかし、進路指導をする側が最初に理解すべきポイントは、それほど多くありません。
今回の記事では、2028年度入試で何が変わるのか、特に大きな変更となる学校特色枠を中心に、できるだけ分かりやすく整理します。
2028年度入試で何が変わるのか
まず全体像です。主な変更は次のとおりです。
・学校特色枠の導入
・第2志望校への出願機会
・特別選抜と一般選抜の一本化
・自己申告書の廃止
・調査書の活動・行動の記録の廃止
・国語、数学、英語に共通問題を導入
・英語資格の読替え率変更
この中でも、進路指導への影響が特に大きいのが学校特色枠です。
学校特色枠とは何か
学校特色枠を一言で説明すると、各高校が特に入学してほしい生徒を、通常の合格判定より先に選ぶ仕組みです。
高校はアドミッション・ポリシーをもとに、特に求める具体的な生徒像を設定します。
そして、その生徒像に合った受験生を学校独自の基準によって優先的に合格させます。
学校特色枠は原則として募集人員の50%以下。
各高校は最大3つまで特色枠を設定でき、受験生が応募できる特色枠は1つです。
また、学校特色枠への応募は希望制です。
合格判定が2段階になる
ここが学校特色枠を理解するうえで最も重要です。2028年度の一般選抜では、合格者を2つの手順で決めます。
第1手順 学校特色枠
まず、学校特色枠に応募した生徒を対象に、高校独自の基準で合格者を決めます。
第2手順 通常の総合点による判定
第1手順で合格しなかった生徒と、学校特色枠に応募しなかった生徒を対象に、通常の総合点で残りの合格者を決めます。
つまり、学校特色枠で不合格になっても、その高校の不合格が決まるわけではありません。
ここは非常に重要です。
例えば、
募集人員240人
学校特色枠24人
だったとします。まず特色枠で24人を選びます。
そこで選ばれなかった生徒も、第2手順に進みます。
そして残りの募集人員を、通常の総合点で争います。
そのため学校特色枠は、推薦入試のような完全に別の入試というより、
一般選抜の中に、先に合格できるルートが追加されたと考えると分かりやすいでしょう。
学校特色枠に応募しても学力検査は受ける
学校特色枠に応募したからといって、学力検査が免除されるわけではありません。
学校特色枠への応募の有無にかかわらず、一般選抜の志願者は学力検査を受験します。
これは、学校特色枠で合格しなかった場合に、第2手順で通常の総合点による判定を受けるためでもあります。
したがって、特色枠だけを受験するということはできません。
学校特色枠は最大50%
学校特色枠は原則として募集人員の50%以下で設定されます。
例えば募集人員240人の高校が、
特色枠10%
と設定した場合、
240人 × 10% = 24人
となります。つまり最大24人を第1手順で先に合格させます。
特色枠の割合は高校によって異なります。
10%の学校もあれば、20%、30%、50%と大きく設定する学校もあります。
今後の高校選びでは、その高校に特色枠があるか
だけではなく、
募集人員の何%を特色枠で取るのか
まで確認する必要があります。
特色枠だから面接をするとは限らない
学校特色枠という名前から、
面接
作文
プレゼンテーション
などをイメージする人も多いと思います。
もちろん、そのような特色枠もあります。
しかし、令和8年7月31日版の学校特色枠資料を読むと、実際にはさまざまな選抜方法があります。
例えば、
・5教科の学力検査を使う
・数学と英語だけを使う
・国語と英語を2倍する
・特定教科の内申を重くする
・作文を使う
・面接を使う
・エントリーシートを使う
・実技検査を使う
などです。
つまり学校特色枠の本質は、
面接や作文を行うことではありません。
各高校が、どんな力を持った生徒を優先的に取りたいのかを独自に決められることにあります。
しかし、資料全体を見ていても、
作文・面接・プレゼンテーションなどを導入している学校は少ない印象もうけました。
具体例① 英語だけで特色枠を決める場合
大阪府教育委員会の資料では、具体例として次のようなケースが示されています。
募集人員240人
志願者300人
特色枠10%
特色枠24人
特色枠応募者50人
この高校が、学力検査の英語の成績が高い者から順に合格
という方法を採用したとします。
この場合、特色枠応募者50人を英語の点数順に並べます。
そして、上位24人を特色枠で合格とします。
非常にシンプルです。
高校側が英語力の高い生徒を求めるのであれば、通常の5教科総合点ではなく、英語という強みを使って先に合格者を決めることができます。
具体例② 数学と英語を2倍する
学校特色枠の資料には、
学力検査の成績 数学、英語を2倍とした630点満点
という記載例があります。
これはどういう意味でしょうか。
通常は、
国語90点
数学90点
英語90点
理科90点
社会90点
合計450点です。
ところが、この特色枠では、
国語90点
数学180点
英語180点
理科90点
社会90点
として計算します。合計630点です。
つまり、数学と英語が強い生徒を高く評価する
という選抜方法です。ここで注意したいのは、数学と英語だけを受験するわけではないことです。
5教科の学力検査は受験します。
特色枠の合否を決めるときだけ、数学と英語の点数を2倍して評価します。
具体例③ 数学と英語だけを使うこともできる
一方、学力検査の数学、英語の成績 180点満点と書かれている場合は意味が違います。
この場合、特色枠の判定に使うのは、
数学90点
英語90点
だけです。国語、理科、社会は特色枠の判定には使いません。
同じ学力検査を使う特色枠でも、
5教科を使うのか
特定教科を2倍するのか
特定教科だけを使うのか
によって意味が大きく変わります。
内申の使い方も高校が変えられる
学力検査だけではありません。調査書の評定についても特色枠独自の評価方法を設定できます。
大阪府教育委員会の資料には、
1年:2年:3年=1:1:3として、さらに数学を2倍
という例があります。
この場合、
数学50点、その他8教科 各25点
合計250点として評価します。
また、数学と英語の評定だけを使用する
という設定も可能です。
つまり2028年度からは、内申点が高いか低いか
だけを見るのでは不十分です。どの教科の内申が高いのかまで高校との相性に関係する可能性があります。
作文を使う特色枠
作文を使う学校もあります。
例えば大阪府教育委員会の資料では、
英語90点
作文90点
合計180点で評価する例が示されています。
まず特色枠応募者を180点満点の得点順に並べます。
そのうえで上位者から、
高校が特に求める具体的な生徒像に合っているかを判定します。
このような特色枠では、単純な学力だけではなく、
高校で何を学びたいのか
どんなことに興味があるのか
高校が求める生徒像と合っているか
といった部分も重要になります。
エントリーシートを使う特色枠
エントリーシートを選抜資料にする学校もあります。
エントリーシートは事前に作成し、出願時に提出します。
また、面接を実施する高校では、エントリーシートを面接の参考資料として使う場合もあります。
大阪府教育委員会の資料には、エントリーシートを使った2つの分かりやすい選抜例があります。
パターンA
エントリーシートを先に評価する
↓
高校が求める生徒像に合う生徒を選ぶ
↓
その生徒を英語の点数順に並べる
↓
上位者を合格
パターンB
英語の点数順に並べる
↓
上位者からエントリーシートを確認する
↓
高校が求める生徒像に合う生徒を合格
同じ英語+エントリーシートでも、順番が違います。
パターンAは生徒像との一致を先に見る。
パターンBは学力を先に見る。
したがって、学校別資料を見るときは、何を使うのかだけではなく、何をどの順番で評価するのか
まで確認する必要があります。
特色枠でも2日目の試験がない場合がある
ここも非常に重要です。
学校特色枠というと、
1日目 5教科
2日目 面接・作文・プレゼンテーション
という入試を想像しがちです。
しかし、必ずそうなるわけではありません。
例えば特色枠が、
英語の点数順
数学と英語の合計
5教科の点数
調査書と学力検査
だけで判定できる場合、新たな独自検査を行わなくても必要な資料は揃っています。
一方、
作文
面接
プレゼンテーション
実技
などを選抜資料に設定した高校では、それらの検査が必要になります。
つまり、学校特色枠=2日目に必ず独自試験ではありません。
ここは制度を理解するうえで重要なポイントです。
志願者全員という言葉には注意
学校特色枠の資料を読むと、志願者全員を学力検査の英語の成績順に並べる
といった表現が出てきます。
この志願者全員には、特色枠に応募していない生徒も含まれます。
ここは非常に重要です。先ほどと同じ、
募集人員240人
志願者300人
特色枠24人
特色枠応募者50人
で考えてみます。
特色枠応募者50人だけを英語順に並べて上位24人を取る方法なら、
50人中24位以内
に入ればよいことになります。
ところが、
志願者全員を英語順に並べ、募集人員の上位10%に到達した者を合格
という方式なら違います。
300人全員を英語順に並べます。
募集人員240人の10%は24人なので、
300人全体の中で24位以内
に入った特色枠応募者だけが合格対象になります。
同じ特色枠10%でも、選抜方法によって難易度が全く違います。
これは学校別資料を読むときに必ず確認したいポイントです。
英語資格を活用しない特色枠もある
2028年度から英語資格の読替え率も変わります。
英検2級は70%。
英語90点満点なので63点相当です。
準1級・1級は90%なので81点相当です。
ただし学校特色枠の資料に、英語資格を活用しない点数とする
と書かれている場合があります。
この場合、特色枠では資格による点数保障を使いません。
入試当日に受験した英語の点数
を使用します。したがって今後は、英検2級を持っている
だけではなく、志望校の特色枠では英語資格を利用するのか
まで確認する必要があります。
通常の総合点による入試も残る
学校特色枠が導入されても、通常の一般選抜がなくなるわけではありません。
学力検査は原則として、
国語90点
数学90点
英語90点
理科90点
社会90点
合計450点です。
調査書は、
中学1年 ×2
中学2年 ×2
中学3年 ×6
として450点満点。
そして高校ごとに設定されたタイプⅠ~Ⅴの倍率を、
学力検査
調査書
それぞれにかけて総合点を算出します。
学校特色枠で合格しなかった生徒は、この通常の総合点による第2手順で改めて判定されます。
自己申告書と活動・行動の記録は廃止
2028年度入試では、これまで全員が提出していた自己申告書が廃止されます。
さらに調査書に記載されていた活動・行動の記録も廃止されます。
調査書に記載する項目は、原則として各教科の評定になります。
一方で、学校特色枠では必要に応じて、
作文
面接
エントリーシート
プレゼンテーション
などを利用できます。
つまり人物面や学校との適性を見る仕組みがなくなるのではなく、
高校ごとの学校特色枠へ移っていくと考えると理解しやすいと思います。
第2志望校にも出願できるようになる
もう一つ大きな変更が、第2志望校への出願機会です。
ただし、公立高校を普通に2校併願できる制度ではありません。
例えば、
第1志望 A高校
第2志望 B高校
とします。
A高校に不合格だった場合でも、必ずB高校で判定してもらえるわけではありません。
B高校を第1志望とした受験生だけで募集人員を満たしていない場合に、第2志望者から合格者を決めます。
つまり、
第1志望校に不合格
↓
第2志望校に空きがある
↓
第2志望校で判定
という仕組みです。
第2志望校が第1志望者だけですでに定員を満たしていれば、第2志望者の合格枠はありません。
そのため、
第2志望制度=公立2校併願
ではありません。
定員に空きが生じた高校への、もう一つの合格機会と考える方が分かりやすいでしょう。
A・B・C問題に共通問題が入る理由
第2志望制度を実施すると、一つ問題が発生します。
例えば、
大阪府の公立高校では、国語・数学・英語について高校ごとにA・B・C問題を選択します。
第1志望校はC問題
第2志望校はB問題
だった場合、受験した問題の難易度が違います。
そのままでは比較できません。
そこで2028年度から、
A問題=基礎的問題+共通問題
B問題=標準的問題+共通問題
C問題=発展的問題+共通問題
という構成になります。
そして第2志望校の判定では、この共通問題部分を使用します。
つまり共通問題は、違う難易度の問題を受けた生徒を、第2志望校で同じ基準で比較するため
に導入されるわけです。
学校特色枠を見ると高校が何を重視しているか分かる
今回の制度改正で、特に注目したいのがここです。
これまで高校選びでは、
偏差値
内申
A・B・C問題
タイプⅠ~Ⅴ
過去の倍率
などを中心に見てきました。2028年度からは、そこに、
学校特色枠の選抜方法という情報が加わります。
例えば、
数学・英語を2倍する高校なら、
数学・英語に強い生徒を評価したい。
特定教科の内申を重くする高校なら、
その分野を中学校でしっかり学んできた生徒を評価したい。
作文やエントリーシートを使う高校なら、学力以外にも学校との適性や意欲を確認したい。
という高校側の考え方が見えてきます。
もちろん、実際の学校別一覧を見ると、作文・面接・プレゼンテーションなどを積極的に導入する学校ばかりではありません。
学力検査や調査書の配点を変えることで特色を出している学校もかなりあります。
だからこそ、
特色枠があるかどうかだけを見るのでは不十分です。
何%の特色枠なのか。何を評価するのか。どの教科を見るのか。
内申をどう使うのか。英語資格を使うのか。作文や面接があるのか。誰を母集団として順位をつけるのか。
ここまで確認して、初めてその高校の特色枠が見えてきます。
2028年度見るべきポイント
今後、大阪府の公立高校を検討するときは、私は少なくとも次の項目を確認する必要があると考えています。
① 学校特色枠の募集割合
② 特に求める具体的な生徒像
③ 特色枠で重視する観点
④ 学力検査のどの教科を使うのか
⑤ 特定教科の傾斜配点があるのか
⑥ 調査書をどう使うのか
⑦ 作文・面接・ES・実技などがあるのか
⑧ どの順番で合格者を決めるのか
⑨ 英語資格を特色枠でも利用できるのか
⑩ 第2手順で使われる通常の総合点
これまで以上に、学校別の入試制度を読み込む必要があります。
偏差値だけでなく入試方式との相性を見る
2028年度の大阪府公立高校入試は、制度だけを見ると複雑に感じます。
しかし学校特色枠の本質はシンプルです。
高校が特に入学してほしい生徒を、通常の合格判定より先に選べるようになる。
これです。
そして受験生側から見ると、
自分の強みを評価してくれる高校を探せる可能性が広がる
ということでもあります。
数学が強い。英語が強い。特定教科の内申が高い。
作文が得意。
スポーツや実技に強みがある。
高校が求める生徒像と非常に相性がいい。
同じ偏差値帯の生徒でも、どの高校の特色枠と相性がいいかによって、受験戦略が変わる可能性があります。
これまでのように、偏差値がこのくらいだから、この高校。
内申がこのくらいだから、この高校。
だけではなく、強みを最も評価してくれる入試方式はどこにあるのかまで考える。
2028年度からの大阪府公立高校入試では、この視点がこれまで以上に重要になると思います。
先生側も、偏差値表だけではなく、各高校が公表している学校特色枠の内容まで確認したうえで、生徒一人ひとりに合った高校を考えていく必要があります。
今回の入試改革は、制度が複雑になるという側面だけではありません。
見方を変えれば、高校の特色と、生徒の強みをこれまで以上に結びつけて進路を考える入試
になるとも言えるでしょう。


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