数字を追う前に、人と働くということ
最近、私の会社では若い社員の退職が続いています。
1年目、2年目、3年目。
正確な離職率を計算したわけではありませんが、長く働いている私からすると、本当に多くの若手社員が入社しては辞めていきました。おそらく80%の若手社員は3年以内に退職します。
これは私の会社だけの問題なのでしょうか。
厚生労働省によると、2022年3月卒の大卒者のうち、就職後3年以内に離職した人は33.8%。
ところが教育・学習支援業限ると44.2%です。
教育の仕事は、もともと若い人が定着しにくい業界の一つだということが分かります。
では、なぜ辞めるのでしょうか。
給料でしょうか。
厚生労働省の若年者雇用実態調査を見ると、最初の会社を辞めた理由として多いのは、労働時間・休日、人間関係、賃金、仕事が自分に合わない、といったものです。
つまり、単純に給料が安いから辞めるだけではありません。
私はここに、もう少し根本的な問題があるように思います。
人は、数字だけでは働き続けられない
私が働く学習塾でも、当然ながら数字を求められます。
売上、生徒数、入会数、退会数。
ランキングもあります。
会社である以上、利益を出す必要があります。
私自身、数字から逃げてはいけないと思っています。
しかし最近、少し怖いことも感じます。
数字だけで人を評価する会社では、社員も会社を数字だけで評価するようになるのではないか。
会社が社員を見る。
売上はいくらか。
何人入会させたか。
利益はいくら出したか。
社員も会社を見る。
年収はいくらか。
休日は何日か。
残業は何時間か。
転職すれば年収はいくら上がるか。
もちろん、どれも大切です。
でも、それだけになった瞬間、会社と社員の関係は単なる条件交換になります。
より条件のいい会社が現れれば、そこへ移ればいい。
会社側も、数字を出せない社員なら入れ替えればいい。
それでは、人と人が一緒に働く意味がどんどん薄くなってしまいます。
私の会社で感じる孤立
私は学習塾の教室長をしています。
私のいる会社の教室長は、一人で一つの教室を任されます。
保護者対応、営業、進路相談、講師育成、シフト管理、清掃、教材管理、成績管理。
ほぼすべてを現場で判断します。
しかも仕事は夜型です。
それなのに、社員同士が深く関わる機会はそれほど多くありません。
会議は上司からの一方通行。実質会議ではありません。
研修も上司からの一方通行。
ほぼ全てがオンライン。
私はベテラン社員で、上司から電話があることも3ヶ月に1回程度。
何か要件がない限り、連絡はありません。
上司からしたらほっといても大丈夫な存在なのでしょう。
しかし仕事で結果が出ていない若手は、本当は誰かと話す必要があります。
しかも結果が出ない。
評価が下がる。
自信をなくす。
孤立する。
そして辞める。
私は、ここに給料だけでは説明できない問題があると思っています。
人間として信頼され、その結果として数字がついてくる
これは会社に対する批判だけではありません。
私自身への戒めでもあります。
私は教室長として、生徒数も売上も追います。
入会してほしい。
退会してほしくない。
講習も受講してほしい。
利益も出したい。
それは仕事だから当然です。
でも、数字を追いすぎると、目の前の人間が見えなくなる危険があります。
保護者が売上に見える。
生徒が在籍数に見える。
講師が労働力に見える。
社員がランキングに見える。
そうなったら、人間が生産性を上げるための部品になってしまいます。
私はそんな仕事の仕方はしたくありません。
生徒の話を聞く。
保護者の不安を聞く。
講師と悩む。
同僚がしんどそうなら声をかける。
意見が違っても、お互い一人の人間として話す。
そういう一見すると数字にならない時間の積み重ねが、信頼になるのだと思います。
そして、
信頼された結果として、生徒が集まる。
信頼された結果として、退会が減る。
信頼された結果として、講師が協力してくれる。
信頼された結果として、売上が上がる。
私は、本来はこちらの順番なのだと思います。
数字を作るために人間関係を利用するのではない。
人間として相手と向き合った結果が、最後に数字として表れる。
ここを逆にしてはいけない。
転職する若い人たちにも思うこと
だから私は、若い社員が転職すること自体を否定しません。
若手の人とお話をしていると、「今より年収100万円あげたいです」と言ってきました。
今より年収が100万円上がる会社があるなら、挑戦するのも一つの選択でしょう。
ただ、給与だけではなく、
誰と働くのか。
どんな能力が身につくのか。
その会社で自分は成長できるのか。
どんな生活を送りたいのか。
10年後、20年後にどんな人間になりたいのか。
そこまで考えて会社を選んでほしいと思います。
同時に会社側も最近の若者はすぐ辞めるで終わってはいけない。
なぜ人が残らないのか。
なぜ孤立するのか。
なぜ会社への帰属意識が生まれないのか。
そこを考える必要があります。
最後は、人なのだと思う
仕事には数字があります。
売上も必要です。
利益も必要です。
給料も大切です。
私ももっと稼ぎたいと思っています。
でも、それだけを追い続けると、人はいつの間にか数字に追われるようになります。
だから私は、数字を捨てたいのではありません。
むしろ逆です。
人との信頼を積み重ねた結果として、数字を作れる人間になりたい。
これは今の私自身の課題でもあります。
仕事をしているのは人間です。
生徒も人間。
保護者も人間。
講師も人間。
社員も上司も人間です。
効率化が進んでも、AIが進歩しても、最後にこの人と一緒にやっていきたいと思わせるものは、人と人との間に生まれる信頼なのではないでしょうか。
若手社員が次々と辞めていく今だからこそ、
会社も社員も、
数字の前に、もう一度人と働くということを考える必要がある。
私はそう思っています。


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