生徒と進路相談をしていると、やりたいことがないという話を本当によく聞きます。
生徒や講師と話していても同じです。むしろ、将来やりたいことがはっきり決まっている人の方が少ないのではないかと思うくらいです。
私自身もそうでした。子どもの頃はサッカーが好きだったので、サッカー選手になりたいと思ったことはあります。でも、現実的な仕事として何をしたいかは、ほとんど考えていませんでした。
今、進路相談をする立場になって感じるのは、職業の知識を増やすだけでは、なかなか本気でやりたい仕事にはつながらないのではないかということです。
目次
- やりたいことがない生徒は本当に多い
- 職業を知るだけでは動機になりにくい
- 社会問題も知識だけでは他人事になりやすい
- 体験すると見え方が変わる
- 進路は社会との接点から生まれるのかもしれない
- やりたいことがないなら社会に出てみる
- 社会を体感することも進路教育の一つ
1.やりたいことがない生徒は本当に多い
進路相談をしていると、将来何をしたいか分からないという生徒はとても多いです。
これは年齢に関係ありません。小学生や中学生だけでなく、高校生でも普通にあります。大学生になっても、自分が将来どんな仕事をしたいのか分からない人はいます。
だから、やりたいことがないこと自体は、そんなに珍しいことではないと思います。
ただ、その状態のまま大学や学部を決めようとすると、どうしても偏差値、場所、知名度などだけで進路を考えることになりやすいです。
2.職業を知るだけでは動機になりにくい
進路指導では、いろいろな仕事を紹介することがあります。
建築士、言語聴覚士、福祉関係、IT関係、医療関係など、世の中には本当にたくさんの仕事があります。
でも、建築士という仕事を知ったから建築士になりたいと思うかというと、そう簡単ではありません。
言語聴覚士という仕事を知ったとしても、それだけで目指したくなるとは限りません。
もちろん、仕事について知ることは大切です。ただ、知識だけでは動機になりにくいのではないかと思います。
自分がその仕事をやりたいと思うためには、もう少し強いきっかけが必要なのかもしれません。
3.社会問題も知識だけでは他人事になりやすい
これは職業だけでなく、社会問題でも同じです。
少子高齢化、貧困、格差、差別、障害、移民問題。
こういった問題について、学校やニュースで知識として学ぶことはあります。
でも、自分がその問題に直接関わっていなければ、どこか他人事になりやすいです。
知ってはいる。でも、自分の生活とは別の世界の話。
そういう状態になりやすいと思います。
4.体験すると見え方が変わる
例えば、海外に留学して、人種差別を受けたとします。
それまでは差別はいけないと知識として理解していても、自分自身が経験すると見え方は大きく変わると思います。
海外で生活する難しさを経験すれば、日本に来て生活している外国人を見る目も変わるかもしれません。
仕事でも同じです。
自分自身が体調を崩して働けなくなったり、心の調子を崩したりすれば、働きたくても働けない人の気持ちを、それまでより深く考えるようになるかもしれません。
お金に困った経験がなければ、貧困の問題を本当の意味で想像するのは難しいでしょう。
自分が年齢を重ねて、生活の中でできないことが増えて初めて、高齢者が感じている不安や不便に気づくこともあると思います。
すべてを自分で経験することはできません。でも、だからこそ、人と出会ったり、話を聞いたりすることが大事なのだと思います。
5.進路は社会との接点から生まれるのかもしれない
最近は、進路は職業一覧から選ぶものではないのかもしれないと思うようになりました。
何かを経験する。誰かと出会う。社会の問題を知る。その中で疑問を持つ。
もっと知りたい。何とかできないのか。この問題を少しでも良くしたい。
そういう気持ちが出てきたときに、初めて学びたい分野や仕事が見えてくるのではないかと思います。
社会との接点ができる。そこから問題意識が生まれる。そして、その問題について学びたくなる。
その先に大学や学部、仕事が見えてくる。
こういう順番でもいいのではないでしょうか。
6.やりたいことがないなら社会に出てみる
だから、やりたいことがない生徒に、無理やり職業を決めさせる必要はないと思います。
それよりも、いろいろな場所に行ってみる。人と話してみる。仕事をしている人の話を聞く。普段行かない場所に行く。
ボランティアでもいいと思います。
職場見学でもいい。
大学のオープンキャンパスで先生や大学生と話すのもいい。
地域の活動に参加してみるのもいいです。
ニュースで気になった問題があれば、実際にその問題に関わっている人の話を調べてみるのもいいと思います。
画面の中で調べるだけではなく、できるだけ現実の社会に触れてみる。
そこに進路のヒントがある気がします。
7.社会を体感することも進路教育の一つ
もちろん、学校の勉強は大切です。
国語、数学、英語、理科、社会。知識がなければ社会を理解することも難しくなります。
ただ、進路を考えるという意味では、勉強だけでは足りない部分もあると思います。
社会にはどんな人がいるのか。
どんな問題があるのか。
その問題に対して、どんな仕事をしている人がいるのか。
そういうものを自分の目で見たり、人と話したり、自分で何かを経験したりする。
私は、そういう社会を体感する経験も、進路教育の大切な一つではないかと思っています。
やりたいことがまだ見つからない。
それは、まだ自分の心が動くものに出会っていないだけかもしれません。
焦って職業を決めるより、少し自分の世界を広げてみる。
社会を見て、人と会って、何かを感じる。
そこから将来やりたいことが見えてくることもあると思います。


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